【シリーズ ESG/SDGs】出張管理による持続可能な出張の実現

1回の海外出張で排出されるCO₂

現在どの業界でも注目されているESGやSDGsですが、どのような取り組みを行っていますでしょうか。
企業にとって必要不可欠な出張もこれらの社会課題と深いかかわりあいを持ちます。

環境の観点からは、出張における大量のCO₂排出が社会課題として挙げられます。
移動手段として、CO₂排出量削減には船や電車の利用が効果的ですが、島国の日本から海外出張に行くには航空機の利用が効率的です。例として、羽田空港からシアトルへエコノミーで出張へ出かけたとすると、その一回につき往復で約1トンのCO₂が排出されています。これは、杉の木71本が一年間に吸収する量とほぼ同じ量とされています。
さらに、上位の座席クラスの選択は一人分の専有面積が大きくなるため、その分のCO₂を排出しているとみなされてしまいます。エコノミーからビジネスに座席クラスをあげるだけで、約2倍のCO₂を排出していることになってしまうのです。

出張の必要性見直しや、座席クラスの規定管理によって、コスト削減や時間の節約だけでなく、CO₂排出量の削減に取り組むことができます。

 

CO₂を減らしたら、地球はどうなるのか

そもそも、どうしてCO₂の排出量を減らさなければならないのでしょうか。
温室効果ガスの一つであるCO₂が大量に排出されると地球温暖化が進行してしまうということは、現代の地球に暮らす人々であれば誰でも知っていることかもしれませんが、その地球温暖化は幅広い社会課題に関係します。
例えば、大量のCO₂の排出が現在のまま続くと、地球温暖化の進行により、南極・北極の氷が溶けることで海面が上昇し水没していく危険性のある街があります。
また、地球温暖化は干ばつや砂漠化、集中豪雨、暖冬などの異常気象を引き起します。
干ばつで水が不足すると、もともと水が不足している地域では安全でない地表水を利用せざるを得なくなり、それによって感染症を引き起こすリスクが高まります。それだけでなく、水汲みに動員される女性や子供の教育の機会も奪われてしまう危険性があります。更に、暖冬や砂漠化の影響で動物たちの居住地が侵害されたり、農作物も安定して育てることが難しくなってしまいます。
CO₂排出量減少に向けた取り組みを行うことで、様々な社会課題の解決に向けた取り組みに着手することができます。

直行便の利用が地球も社員も守る

CO₂排出量削減のためには、出張の必要性の見直しが効果的です。
しかし、視察や顧客訪問など現地を訪れる必要不可欠な出張を削ることはできないのも事実です。
そこでCO₂排出量を削減しつつ出張を可能にする方法の模索が必要となってきます。

例えば、直行便を選択することでCO₂排出量削減に取り組むというのもその1例です。
経由便を使用するよりも直行便を使用する方が移動時間が少なくなるため、それに伴いCO₂の排出量削減されます。
航空機のCO₂排出においては、離着陸時における排出量が最も多いため、一度経由するだけで直行便の2倍のCO₂が排出されてしまいます。

さらに、直行便の利用は出張者の負担の軽減も可能です。直行便を選択することで移動時間が短縮されるだけでなく、乗り継ぎでの手続きや乗り遅れのリスク、荷物の紛失など移動に関する不安を解消することで本来の仕事に集中することが可能になり、パフォーマンス向上につながります。

現在の出張形態を分析し、出張管理を行うことによってコスト面だけでなく、出張者の安全・働きやすさの確保とCO₂排出量削減に取り組むことが可能になります。そして、ESGの取り組みを投資家や株主へ打ち出す際に重要なアピールポイントになることは間違いありません。

 

理念に沿ったサステイナブルトラベル

今回は、出張管理によって可能になるCO₂排出量削減についてお伝えしましたが、ESGやSDGsに関する社会課題解決の取り組み方法は様々です。
必要な出張を見直し、出張機会を減らすことは環境問題の解決につながります。しかし、その一方でそれまで出張者が多く来ていた都市の経済衰退のリスクもないとは言えません。
また、出張削減の取り組み程のCO₂排出量削減には及ばずとも、ホテルの選定方法の工夫やモバイルツールの利用など、CO₂排出量を削減するためには様々な取り組み方法があります。

1つの取り組みが全ての社会課題を全くネガティブな要素なく解決することは、非常に難しいです。
その為、どの社会課題解決に注目してどのように取り組むのかということは、それぞれの企業の文化や理念、強みによって変わるはずです。
出張の分析を徹底的に行い、現状把握することで、より効果的なESG課題への取り組みが可能になるのではないでしょうか。

 


トラベルコンサルティング事業部
コンサルタント
日詰 菜々子